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- 2018.09.13 Thursday
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宮藤官九郎作、いのうえひでのり演出の劇団☆新感線最新作『Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜』が10月19日、大阪のフェスティバルホールで開幕した。平安時代の吸血鬼(生田斗真)がビジュアル系バンドのヴォーカリストとして現代に蘇り、愛するかぐや姫の生まれ変わりを探し求める時空を超えた物語。
体操競技の床に例えるなら、助走して捻って回って踏み切って、パーンと空中で大技を決めた瞬間パカッと「どこでもドア」が開き、着地後にはまったく別世界が広がっていた、というような。文字通り予測不可能な展開なのだ。物語は海外のB級ホラー、特撮、SF、時代劇、Vシネマ、純愛…など複数の映画をザッピングしながら、同時にテレビやCMもチェックするような感覚。「帰ってきたぜ、オオサカー!」の掛け声に、観客も総立ちで応える音楽フェスタイムまで盛り込まれ、盆と正月をいっぺんに味わうような気分。そんな縦横無尽な脚本を舞台化したいのうえ演出は、まるでマジックでも見るようで。映像や照明、舞台装置を効果的に駆使し、ダイナミックに観客を劇世界へと誘っていく。
芸達者な劇団員らは、宮藤の視点でより灰汁を煮詰めたようなキャラ付けが一周回って新鮮にも感じられ、何より豪華ゲスト陣が破天荒な役柄を存分に楽しんでいる様子が一層お祭りムードを盛り上げる。効果音に合わせ変顔も厭わない生田だが、ここぞの場面では、心底かっこいい!と見惚れてしまう、人目を惹く美貌は本物。ヒロインの小池栄子は、人知を越えた役柄を体当たりで演じる、硬軟自在な手数の多さに舌を巻く。同じく、カメレオン的活躍で複雑な設定と役柄に説得力を持たせる中村倫也。妖艶さを湛えた視線で観客の心を射抜き、抜群の演技力で物語を牽引していく、もう一人の主役と呼びたい存在だ。さらに、妖しくもキュートな魅力でファンタジー要素を担う篠井英介。地元関西が生んだアイドルグループ、ジャニーズWESTの神ちゃんこと神山智洋は、劇団初参加にして大健闘。登場の度に爆笑をさらい、本領発揮のダンスも披露。限られた場面にもばっちり爪痕を残している。
かくして、見所満載の物語は、劇的な幕切れを迎える。今こそ「千年前から愛してる」の告白が、深く切なく胸に突き刺さる。愛を語る男女の声、視線、佇まい、そしてあの決着の付け方ーー。いのうえ美学が結実したシビれるほどの光景に、万雷の拍手が沸き起こった。
10月31日(月)まで大阪・フェスティバルホールにて上演中。
取材・文:石橋法子 撮影:田中亜紀
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その荒唐無稽な設定、超豪華すぎる顔ぶれに噂が噂を呼びつつも、なかなか真実が明らかにならないまま、開幕まで2カ月を切った6月上旬。梅雨空の東京某所にて、2016年劇団☆新感線夏秋興行 SHINKANSEN☆RX『Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜』の製作発表記者会見が行われました。
壇上前方を飾るのは、たくさんの鮮やかな薔薇と黒竹と有刺鉄線。華やかで妖しげで、まさに作品のイメージにぴったりです。
この日の登壇者は演出のいのうえひでのりさん、作の宮藤官九郎さん、キャストからは生田斗真さん、小池栄子さん、中村倫也さん、神山智洋さん、橋本じゅんさん、高田聖子さん、粟根まことさん、篠井英介さんという以上10名が顔を揃えました。みんなで示し合わせたのか、各自の作品から受けたイメージだったのか、ほとんどのキャストが黒をベースにした衣裳を着用。キリッと大人の雰囲気の中、会見が始まりました。司会は中井美穂さんです。
作品への想いを熱く語る、登壇者各自のコメントをここでご紹介!
いのうえひでのり (演出)
今回はざっくり言うとタランティーノの映画みたいで、コワカワイくて、ゲラゲラ笑っているうちにちょっと不思議な感覚に陥るようなお芝居を目指します。斗真が新感線に出演してくれるのは10年ぶり。まさにその10年前、漠然としたアイデアとして「次回はヴァンパイアの設定でやりたいと思っているんだよね」という話はしていたんです。でもその直後に斗真がブレイクしたこともあって、企画がなかなか実現できなかった。その間「もしかしたらおまえで出てきたアイデアだけど、別の俳優さんでやっちゃうかもしれないよ」なんてこともしょっちゅう言っていたので(笑)、こうしてアイデアのきっかけになってくれた斗真本人で実現でき、本当によかったと思っています。
宮藤官九郎 (作)
新感線に作という形ではこれが3作目ですが、役者としても何本かいのうえさんの演出を受けたりしているので、自分もいろいろなことがだいぶわかってきたつもりだったんですが。いのうえさんにどんな話にしたいかを聞いた時「1000年前、平安時代から生きているヴァンパイアがビジュアル系のヴォーカリストとして、運命の女性を探しているんだ」と言われまして。どういうことか、さっぱりわかんなかった(笑)。とはいえ、書いてみたらまさにそういう世界になりました。タイトルも「なんか、ヴァン!バン!バーン!みたいな感じ」との注文だったので、そのまま『Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜』に。でも内容のことを考えると、役者のみなさんには改めて申し訳ない気持ちもありますが(笑)……とにかく本番が楽しみです。
生田斗真 (藤志櫻・とうしろう/TOSHIRO)
10年ぶりに新感線の作品に参加することになりました。僕がお芝居に目覚めるきっかけを作ってくれたのがいのうえさん始め、劇団☆新感線のみなさんなんです。僕が17歳、高校2年生の時の出会いでした。お芝居にひたむきで面白くて楽しくて優しい、このお兄さん、お姉さんたちに憧れて、いつか僕もこういう人たちみたいになりたいなと思って、今日までがんばってきました。こうして10年ぶりにご一緒できるので「あいつもちょっとはできるようになったな」とホメられるよう、一生懸命がんばりたいと思っています。
小池栄子 (かぐや姫)
斗真くんに言い寄られながらも神山くんを選ぶという、とても贅沢な役をやらせていただきます。いのうえさんの演出は大好きで、また参加できることが本当にうれしいので今からワクワクしています。今回も歌ありアクションありなので、体力をつけて稽古に臨みたいですね。それにしても、宮藤さんはきっと私のことがあまり好きじゃないんだろうなあ(笑)。以前も宮藤さんの脚本の時にモノマネやタコ踊りをやらされたので、今回もそういうコーナーがあるかもという覚悟はしています!(笑)
中村倫也(竹井京次郎 たけい・きょうじろう)
僕は演劇というものを始めて10年くらいになるんですけれど、ずっと新感線は好きで観続けていて、いつか出たいな、出させてくださいよっていつも言っていたんですがご縁がなくて。その間に同世代の若い人たちがいっぱい出ていくのを見て、チクショーって思いながら僕も新感線に出ることを目標にがんばってきました。ようやく初参加できるので今、意気込みに満ち満ちております。必ず面白いものを、楽しみにしてくださっているお客さんに届けたいと思っています。
神山智洋 (蛍太郎 けいたろう)
芝居の経験が少ない自分がこんなに大きな舞台に出させていただけるなんて、楽しみという気持ちとうれしいという気持ちがある中でやはり、不安やプレッシャーも正直あります。自分がどこまでできるかはやってみないとわからないので、とにかくできるところまで思いっきりやってみたいです。この素晴らしい大先輩たちからいろいろなことを吸収させていただきつつ、人としてもここでもうひとつ大きくなれたらなと思っています。ハジけます、がんばります!(笑)
橋本じゅん (照屋)
前作の、いのうえ歌舞伎<黒>BLACK『乱鶯』とは沖縄とシベリアくらいまったく違う印象のこの作品に、僕も参加させていただくことになりました。稽古前でまだちょっとよくわからないことが多いのですが、お客様には暑気払いにちょうどよかったなと思っていただけるようなパッとする作品になるはずですので、たくさんの方々に楽しみにしていていただきたいですね。眩しく見ていた若い方々と、まさか一緒にやらせてもらえる時がくるとは。ぜひ化学反応を期待してもらいたいと思います。
高田聖子 (サカエ)
私は斗真くんの大ファンという役柄なので、もしかしたら斗真くんファンの方々もご自分と私とを照らし合わせながら楽しんでいただけるのではないでしょうか。最近は劇団員の年齢も上がってきまして「安定の面白さ」なんて言われていますが、今回はまったく安定しないものになりそうです。さらに長年連れ添ってきた劇団メンバーの見たことのない顔が出てきそうなエピソードもたくさんあるので楽しみであり、不安でもあり。玉乗りの玉の上に乗るような気分です。落っこちないよう、向かっていけたらと思っています。
粟根まこと (霧島茂 きりしま・しげる(黒霧島 くろきりしま))
暴力団の若頭で、大筋の裏側でちょっと暗躍するようなところがある役です。久しぶりに暗躍することができてとても楽しいんですが、大筋があまりにも荒唐無稽な話になっていますので、これはだいぶ好き嫌いが分かれるんじゃないかなあ。生田くんとは『スサノオ』も『Cat in the Red Boots』もご一緒させていただいてて、頭の回転が速い若者だなと頼もしく見てきました。でも今回はカワイイ、カッコイイだけでなく、無様な姿も含め、いろいろな面が見られるはず。生田ファンはものすごく楽しめる作品になると思います。
篠井英介 (マダム馬場)
劇団☆新感線さんと、私が以前所属しておりました花組芝居とはだいたい同世代の小劇団なのですが、30年を経てこうして初めてご一緒させていただくことになりました。そうしたら役名が“マダム馬場”(笑)。ネーミング自体に宮藤さんの愛情を感じてすごくうれしくて、すっかり気に入っちゃいました。女形として「やるわあー!」って気持ちです。ただ、やはり30年の時を経ただけあってなかなか心も体も頭も大変そう。歌もダンスもあるので、振付の先生に袖の下でも渡して軽めにしてもらおうかしらと画策中です。
このあと行われた質疑応答では、使われる楽曲は10何曲かあってバラエティに富んだジャンルの曲が用意されているということが明かされたり、生田が感じるいのうえ演出の魅力などが語られたり。常に笑い声が響く中、同時にそれぞれの意気込みも伝わってくるという、アツさとアットホームさがにじみ出てくる記者会見となっていました。
ヴァンパイア・藤志櫻の棺の蓋が開くのもいよいよ間もなくです。どれほどまでに暑い夏が劇場に到来するのか、どうぞお楽しみに!
文:田中里津子 撮影:田中亜紀